Wanは、Alibabaが開発した動画生成AIのモデルファミリーです。テキストのプロンプトや写真、参考用の動画クリップを渡すと、完成した動画を返してくれます。Wan 2.5以降は、音楽や効果音、口の動きに合ったセリフまで映像と同時に生成できるようになりました。最新モデルのWan 3.0は2026年8月に登場し、1080pで最長30秒のクリップを作れます。
この記事では、Wanの成り立ちから各バージョンの違い、オープンソースのモデル、無料で使える範囲、今日から始める方法までをまとめて解説します。
Wan AIとは?
Wanは、テキスト・画像・音声・動画をもとに動画や画像を生成する、Alibabaの生成AIモデル群です。中国語の正式名称はTongyi Wanxiang(通义万相)で、ざっくり言えば「一万の姿」という意味です。初期の英語資料ではWanxと略されることもありました。現在は「Wan」「Wan AI」「Wan video」のどれも、同じモデルファミリーを指しています。
ほかの動画生成AIと比べて、Wanには3つの大きな特徴があります。
- オープンソースがルーツ。AlibabaはWan 2.1とWan 2.2を、Apache 2.0ライセンスのオープンウェイトとして公開しました。この2つは、コミュニティ製の動画ツールやComfyUIのワークフロー、ファインチューンモデルの多くで土台になっています。
- 映像と一緒に音も生成。Wan 2.5以降は、音楽・効果音・セリフを後から重ねるのではなく、映像と同時に生成します。セリフを「」で囲めば、画面の中のキャラクターがそのまま話します。
- ふだんの言葉で演出できる。Wanはショットサイズ、カメラワーク、ライティング、レンズ、雰囲気といった映画の言葉を理解します。監督になったつもりで、シーンを言葉で説明すればOKです。
Wanの開発元は?
Wanを開発しているのは、AlibabaのAI研究部門であり、大規模言語モデルQwenも手がけるTongyi Labです。Alibabaは最新のWanモデルを、Alibaba Cloud Model Studio、Qwen Cloudプラットフォーム、そして自社サイトのwan.videoで提供しています。オープンウェイト版はGitHubとHugging Faceで公開されています。
Wanを使うのに、必ずしもAlibabaのサービスを経由する必要はありません。Wan Studioは、シンプルなプロンプト入力欄からWanのモデルを使える独立系のブラウザアプリで、Alibabaとは提携関係にありません。デフォルトのモデルはWan 3.0で、モデルメニューからWan 2.7とWan 2.5も選べます。
Wanの全バージョン一覧:Wan 2.1からWan 3.0まで
Alibabaは2025年2月から2026年8月までの18か月間で、6つのメジャーバージョンをリリースしました。最初の2つはオープンソースです。Wan 2.5以降はクラウド提供型となって音声も生成するようになり、リリースのたびに長尺化と操作性の向上が進んでいます。
| バージョン | リリース | 主な変更点 | 最長クリップ | 提供形態 |
|---|---|---|---|---|
| Wan 3.0 | 2026年8月 | 30秒のシーン生成、ドキュメントやWebページの入力、動画の延長 | 30秒・1080p | クラウドのAPIとアプリ |
| Wan 2.7 | 2026年4月 | 最初と最後のフレーム指定、指示による動画編集、複数リファレンスの入力 | 15秒・1080p | クラウドのAPIとアプリ |
| Wan 2.6 | 2025年12月 | マルチショットのストーリー生成、人物の見た目と声を使うリファレンス動画生成 | 15秒・1080p | クラウドのAPIとアプリ |
| Wan 2.5 | 2025年9月 | Wanとして初めてネイティブ音声とリップシンク付きのセリフに対応 | 10秒・1080p | クラウドのAPIとアプリ |
| Wan 2.2 | 2025年7月 | MoE(Mixture of Experts)設計、一般向けGPUで動く720pモデル | 5秒・720p | オープンウェイト(Apache 2.0) |
| Wan 2.1 | 2025年2月 | 初のオープンソース公開、14Bと1.3Bのモデル | 5秒・720p | オープンウェイト(Apache 2.0) |

Wan 2.1(2025年2月):オープンソースで一躍注目
Alibabaは2025年2月25日にWan 2.1をオープンソース化しました。公開されたのは4つのモデルで、内訳は140億パラメータと13億パラメータのテキストから動画モデル、そして480p用・720p用の14B画像から動画モデルです。小型モデルは5秒・480pのクリップを約8GBのVRAMで生成できたため、一般的なゲーミングGPUでも動作しました。公開時点で、Wan 2.1は動画生成ベンチマークのVBenchで総合スコア86.22%を記録し、首位に立っています。
Wan 2.2(2025年7月):MoEアーキテクチャを採用
Wan 2.2は2025年7月28日に、前回と同じくApache 2.0ライセンスで公開されました。メインモデルは処理を2つのエキスパートに分担させる仕組みで、生成の序盤は一方が構図と動きを決め、終盤はもう一方が細部を仕上げます。合計270億パラメータのうち、同時に動くのは140億だけなので、実行コストはWan 2.1とほぼ変わりません。コンパクトなTI2V-5Bモデルはテキストと画像の両方の入力に対応し、RTX 4090のようなGPU 1枚で720p・24 fpsの動画を生成できます。2025年8月には、音声ファイルからキャラクターを動かすWan2.2-S2Vも追加されました。
Wan 2.2は、今でも最もよく検索されているWanのバージョンです。いちばんの理由は、自分のハードウェアで無料で動かせることにあります。
Wan 2.5(2025年9月):ネイティブ音声に対応
Wan 2.5は、2025年9月下旬に開かれたAlibabaのApsaraカンファレンスでプレビュー公開されました。音声と映像を同時に生成した初めてのWanで、声・効果音・音楽を動きに合わせて出力します。クリップは1080pで最長10秒。音声トラックを入力して、それに合わせてシーンを動かすこともできます。Wan 2.5はオープンウェイトとしては公開されず、これを境にWanはクラウド提供型のモデルへと移っていきました。
Wan 2.6(2025年12月):マルチショットでストーリーを作る
Alibabaは2025年12月中旬にWan 2.6を発表しました。同じキャラクターを保ったまま1つのプロンプトを複数のショットに分けられるようになり、クリップの長さも15秒に伸びています。リファレンス動画生成もこのバージョンで登場しました。人物の短いクリップをアップロードすると、その人の見た目と声のまま新しいシーンに登場させられます。
Wan 2.7(2026年4月):コントロールと編集
Wan 2.7は2026年4月上旬に、テキストから動画、画像から動画、リファレンス動画生成、動画編集をまとめたスイートとして公開されました。最初と最後のフレームを両方固定したり、複数のリファレンス画像やクリップを1回の生成で組み合わせたり、「ジャケットを赤に変えて」のような普通の指示で既存の動画を編集したりできます。クリップの長さは2〜15秒、解像度は720pまたは1080pです。
Wan 3.0(2026年8月):30秒のシーンを一度に生成
Wan 3.0は2026年8月6日にパブリックベータとなり、8月24日に正式リリースされました。最長クリップは2倍の30秒(最大1080p)になり、Alibabaによればショットをまたいでも顔やレイアウト、音声が安定するとのことです。入力の幅も広がり、PDFやスライド、スプレッドシート、Webページを渡すと、その内容から動画を作ってくれます。既存のクリップを延長することも可能です。Wan 2.1や2.2と違い、ウェイトは非公開です。
Wanでできること
Wanファミリーは、動画生成AIに求められる機能のほとんどをカバーしています。新しいバージョンは既存の機能を置き換えるのではなく、機能を積み上げる形で進化してきました。
- テキストから動画。シーンを説明すると、カメラの動きやライティングまで含めて映像にします。
- 画像から動画。写真を最初のフレームとしてアップロードすると、それを動かします。商品写真やポートレート、アート作品に便利です。
- 最初と最後のフレーム指定。クリップの始まりと終わりを固定すると、その間の動きをWanが補います。ループ動画やトランジションにぴったりです(Wan 2.7と3.0)。
- リファレンス動画生成。キャラクターや商品、ロケーションの画像やクリップを渡すと、新しいシーンでも見た目をそろえてくれます(Wan 2.6以降)。
- ネイティブ音声とセリフ。音楽・効果音・セリフが映像と一緒に出力されます。「」で囲んだセリフはリップシンクされます(Wan 2.5以降)。
- マルチショットのシーン。1つのプロンプトでカットを挟んだ複数のショットを描き、キャラクターも一貫させます(Wan 2.6以降)。
- 動画編集。クリップをアップロードし、衣装や天気、スタイルなど変えたい内容を書くだけ。動きはそのままに描き直します(Wan 2.7と3.0)。
- 動画の延長。既存のクリップを前にも後ろにも延ばせて、合計で最長30秒まで伸ばせます(Wan 3.0)。
- 画像生成。AlibabaはWanの画像モデルも提供しており、Wan Studioにも動画と並んで画像モードがあります。

ただし、すべてのアプリがすべての機能に対応しているわけではありません。Wan Studioでは、リファレンス入力と編集モードはWan 2.7で動き、Wan 3.0はテキストのプロンプトか最初のフレームを入力にして最長30秒まで生成します。
Wanはオープンソース?
一部はオープンソースです。Wan 2.1とWan 2.2、そしてWan2.2-S2Vなどの派生モデルは、商用利用も認められているApache 2.0ライセンスのオープンウェイトです。GitHub、Hugging Face、ModelScopeからダウンロードして、ComfyUIやHugging Face Diffusersで動かせます。
Wan 2.5・2.6・2.7・3.0は、APIやアプリを通じて提供されるクラウド型のモデルです。Wan 3.0のウェイトは、リリース時点で公開されていません。最新機能やネイティブ音声、数秒より長いクリップが必要なら、クラウド版を使うことになります。
Wan AIは無料で使える?
使い方次第では無料でも使えます。
- オープンウェイト。Wan 2.1と2.2は無料でダウンロードできます。その代わり、ハードウェアと環境構築の手間がかかります。1.3BモデルはVRAM約8GB、Wan 2.2のTI2V-5Bモデルは24GBのGPUで動き、14Bモデルにはさらに多くのメモリかオフロードが必要です。
- Wan Studioの無料プラン。毎月160クレジットがもらえ、480pのWan 2.5動画を最大2本作れます。カード登録は不要で、ウォーターマークも入りません。詳しくはWanを無料で使う方法をご覧ください。
- 有料プラン。Wan Studioは月額$14・2,800クレジット(動画約39本分)から使えます。有料プランでは、Wan 3.0とWan 2.7、720pと1080pの出力、商用ライセンスが利用可能です。Alibaba CloudのAPIは、動画の秒数単位で課金されます。プランの比較は料金ページで確認できます。
Wanはどこで使える?
利用方法は3つあります。どこまで環境構築をしたいか、どの機能が必要かで選びましょう。
| 方法 | おすすめの人 | 使えるWanモデル | 必要なもの |
|---|---|---|---|
| Wan Studioなどのブラウザアプリ | クリエイター、マーケター、すぐに結果がほしい人 | Wan 3.0、2.7、2.5 | メールアドレス(無料プランから始められます) |
| Wan APIやAlibaba Cloud Model StudioなどのAPI | 自社のプロダクトに動画生成を組み込みたい開発者 | 最新のクラウド提供モデル | APIキーと、有料プランまたはクラウドのアカウント |
| ComfyUIやDiffusersでオープンウェイトをローカル実行 | 自分でいじりたい人、研究者、オフラインで作業したい人 | Wan 2.1、2.2 | 8〜24GB以上のNVIDIA製GPUと、セットアップの時間 |
それぞれの方法の詳しい手順は、Wanの使い方ガイドで解説しています。開発者の方はWan APIから始めてみてください。
Wanはどのモデルを選べばいい?
長い動画やストーリー性のある作品にはWan 3.0、リファレンスや編集が必要ならWan 2.7、安く下書きを作るならWan 2.5を選びましょう。目的ごとの最適なモデルを下の表にまとめました。
| やりたいこと | 使うモデル | 理由 |
|---|---|---|
| 15〜30秒の広告やストーリーを1回の生成で作りたい | Wan 3.0 | クリップが最も長く、ショットをまたいでもキャラクターが安定 |
| 複数のシーンで同じキャラクターや商品を使いたい | Wan 2.7 | リファレンス画像・クリップ・音声をプロンプト内でタグ付けできる |
| 既存の動画の一部を変えたい | Wan 2.7の編集モード | 元の動きを保ったまま、指示どおりに編集できる |
| シームレスなループや正確なトランジションを作りたい | Wan 2.7 | 最初と最後のフレームを指定できる |
| アイデアを安く試したい | Wan 2.5またはWan 2.5 Fast | 5秒または10秒のクリップ、クレジット消費が最も少なく、無料プランでも使える |
| すべて自分のハードウェアで動かしたい | ローカルのWan 2.2 | オープンウェイトでコミュニティ製の拡張も使えるが、音声生成は非搭載 |
Wanの活用例
Wanで作られる動画の多くは、SNSのフィード向けの短く実用的なものです。よくある使い方を紹介します。
- 動画広告・商品紹介。商品写真を最初のフレームにすると、Wanが動きと音楽、セリフを加えてくれます。AI商品動画ジェネレーターのまとめ(英語)もご覧ください。
- SNS用のコンテンツ。TikTok、リール、YouTubeショート向けの縦型9:16クリップ。詳しくはTikTok向け動画生成AIの紹介記事(英語)で取り上げています。
- しゃべるキャラクターや解説動画。「」で囲んだセリフはリップシンクされるので、ポートレート写真にセリフを話させることもできます。やり方は写真をしゃべらせる方法(英語)で解説しています。
- ミュージックビデオ。BGMと効果音がカットと一緒に生成されるので、編集がビートにぴたりと合います。
- 短編映画・絵コンテ。キャラクターが一貫したマルチショットのシーンで、企画のプレゼンやプリビズができます。
- ビジネス向けの解説動画。Alibabaのプラットフォーム上のWan 3.0なら、スライドやレポートを短い動画に変換できます。
Wanの注意点・制限
Wanは高性能ですが、魔法ではありません。次の制限を踏まえて使いましょう。
- 破綻は今でも起こる。手や非常に速い動き、人の多いシーンは崩れることがあります。何テイクか生成する前提で考えましょう。
- 画面内の文字は不正確。看板やラベルの文字は崩れやすいので、正確な文字は編集ソフトで入れましょう。
- リップシンクは短いセリフが得意。長いスピーチより、話者ごとに1〜2文のほうがきれいに同期します。
- 長さと解像度でコストが上がる。1080pの30秒クリップは、480pで5秒の下書きよりはるかに多くのクレジットを使います。
- 最新モデルはクローズド。Wan 2.5以降は、ファインチューニングもセルフホストもできません。
- 肖像権や権利に注意。使用許可のある顔・声・音楽・ブランドだけを使いましょう。プラットフォーム側で一部のリクエストがブロックされることもあります。
よくある質問
Wanという名前の由来は?
Wanは、Alibabaの画像・動画生成モデルの中国語名「Tongyi Wanxiang(通义万相)」に由来します。「Wanxiang」は、ざっくり言えば「一万の姿」という意味です。略語ではないので、WANではなくWanと表記します。
Wan AIはどこの会社が作っている?
WanのモデルはAlibabaのTongyi Labが開発しています。Wan Studioなどのアプリを通じてWanのモデルを利用できますが、Wan Studioは独立したサービスで、Alibabaとは提携していません。
Wanの最新モデルは?
2026年8月にリリースされたWan 3.0です。ネイティブ音声付きで、1080p・最長30秒のクリップを生成でき、ショットをまたいでもキャラクターが安定します。リファレンス入力や動画編集では、引き続きWan 2.7が定番です。
Wan AIは無料?
オープンソースのWan 2.1と2.2は、無料でダウンロードして自分のGPUで動かせます。ブラウザで使うなら、Wan Studioの無料プランで480pのWan 2.5動画を月に最大2本、カード登録なしで作れます。Wan 3.0とWan 2.7には有料プランが必要です。
Wanはオープンソース?
Wan 2.1とWan 2.2は、Apache 2.0ライセンスのオープンソースです。Wan 2.5・2.6・2.7・3.0はアプリやAPIで使えるクラウド提供型のモデルで、ウェイトは公開されていません。
Wanで音声付きの動画は作れる?
はい、Wan 2.5以降なら作れます。音楽・効果音・セリフは、映像と同じ生成の中で作られます。キャラクターのセリフを「」で囲めば、口の動きに合わせて話してくれます。なお、オープンソースのWan 2.1と2.2のテキストから動画・画像から動画のモデルは無音です。
Wan 2.2とWan 3.0の違いは?
Wan 2.2はローカルで動かせるオープンソースのモデルで、最大720p・約5秒の無音クリップを作ります。Wan 3.0はクラウド提供型で、1080pで最長30秒の動画を作れ、音声とセリフの生成やマルチショットのシーンにも対応しています。
Wanで作った動画は商用利用できる?
Wan 2.1と2.2のApache 2.0ライセンスは、商用利用を認めています。クラウド版の場合は、利用するプラットフォームの規約を確認してください。Wan Studioでは、すべての有料プランに商用ライセンスが含まれています。無料プランはモデルのお試し用です。
まとめ
Wanはオープンソースの研究成果としてスタートし、音声、マルチショット、30秒のクリップまでこなす、今もっとも高性能な動画生成AIファミリーのひとつへと成長しました。その実力を知るいちばんの近道は、実際に試してみることです。Wan Studioで無料ではじめて、短いシーンを1つ書いて生成してみましょう。さらにクオリティを上げたくなったら、Wanプロンプトガイドをご覧ください。

